リンク だいぶ前に読み終わって、レビュー書こうと思っていたのですが、今の今になってしまいました。うん、やっぱり梨木さんの小説はいいなぁ。笑一時期、10代後半~20代前半のころ阿呆のごとく本を読み漁っていた時期があり、量を読むことに躍起になって結局内容はまるきり覚えてないというものも多いのですが(笑)、今でもふとした折に手に取って読んでみる作家さんの一人です。梨木さんの紡ぐ物語は、実体のないもやっとしたものではなく、何か真ん中のほうにしっかりとした真実を隠し持っている気がします。 はてさて、なにやら珍妙なタイトルのついたこの小説ですが、滞土の「土」は土耳古(トルコ)のこと。エフェンディとはトルコ語で「学士様」という意味の敬称らしいです。内容を簡潔に説明すると『考古学を勉強する村田くんという一人の青年のトルコ滞在記』になるのでありますが・・・。 やはり梨木さんの紡ぐ物語なのだなあ、1899年という時代背景の中、村田くんを取り巻く様々な人々、宗教 神々。 これらのものが、かの地でファンタジックに交錯してゆくさまは淡々としながらも胸を熱くさせます。イスタンブールの景色や町並みの描写は、まるでその時代その場所に立っていたと思わせるよう。 物語を彩るいきいきとした登場人物も魅力です。下宿先の大家の英国人ディケンズ夫人、同じように部屋を借りている、希臘人のディミィトリス、独逸人のオットー、下働きの回教徒のムハンマド。そして、ムハンマドのつかまえた鸚鵡(オウム)・・・などなど。 そして梨木さんの作品はどことなく『死』というものが独特の形で扱われている気がします。それは目に見えない世界に敬い寄り添って生きてきたわれわれ古き良き時代の日本人の本質のようなもの。村田エフェンディ~とも繋がりのある梨木さんの「家守奇譚」ですが、こちらはさながら泉鏡花の世界。(鏡花ほど毒気はないけど)木原敏江の「摩利と新吾」やヘッセの「デミアン」読んだ時の感じと似ている気がするのは私だけでしょうか。笑 言葉の一つ一つが珠玉です。宗教とは、国とは、戦争とは、人間とは一体何なのか、 、そのエッセンスがすべてここに隠されているような気がします。 おすすめです。