5月。忘れたころに突如としてXのタイムラインを絢爛豪華に彩る、ファンタジーなお洋服を身に纏ったセレブ達の面々を見つけると、今年もメットガラ(MET GALA)の季節がやってきたのだなと気づきます。
今年のメットガラも眼福でございました。あ、でも海外セレブに詳しいわけではなく、各メゾンの華美なドレスを見て空想の世界に連れて行ってもらうのが好きなのであります。
そもそもメットガラとは何ぞやという人は下記を↓
メットガラ(英語: Met Gala)は、毎年5月の第一月曜日にニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されるファッションの祭典である。コスチュームインスティテュートガラと正式に呼ばれていて、 メットボールの名でも知られており、 ニューヨーク市のメトロポリタン美術館のコスチュームインスティテュート(メトロポリタン美術館服飾研究所)の利益のために毎年行われているチャリティーイベントである。 コスチュームインスティテュートの毎年恒例のファッション展示会の開幕を飾る祭典でもある。世界中から多くのセレブが参加し、それぞれが豪華なドレスを披露する。(Wikipediaより)
毎年のメットガラは、その年の服飾研究所(コスチュームインスティテュート)の展覧会のテーマを祝うもので、またメトロポリタン美術館の中で唯一「自らの資金で活動を維持する必要がある学芸部門」である服飾研究所の資金調達のためのものなのだそう。
というのも、ファッションは他のアートからはどちらかというと軽視されてきた歴史があるからなのかもしれない、またメトロポリタン美術館に限ったものではなく、膨大な作品を保存修復し、後世に残していくということは、人間の歴史文化を伝えていくという部分でもとても重要なことな反面、とてもお金がかかるということでもあります。華やかなレッドカーペットにばかり注目してしまいますが、そういった事情を鑑みるとメットガラの主催を務めるヴォーグ誌のアイコン的存在でもある編集長アナ・ウィンターの手腕の凄さを感じずにはいられません。
今年の服飾研究所の特別展は、『Sleeping Beauties: Reawakening Fashion(眠れる美への追憶──ファッションがふたたび目覚めるとき)』ファッションの名作と自然界の歴史と繋がりを辿る展覧会だそうで、古さと脆さゆえに二度と纏うことができない貴重な衣服に、テクノロジーを駆使して新たな命を吹き込むというもの。
それに合わせたメットガラのドレスコードは「The Garden of Time(時間の庭)」(…J・G・バラードが1962年に発表した同名の短編小説からインスピレーションを得たもの)。なので時間や花や蝶などの庭園を思わせる衣装が多く、とても華やかでした。
お気に入りは、女優アーリヤー・バットが纏うPRABAL GURUNGのインドの伝統的な衣装サリーにインスピレーションを得たドレス。163人の職人が1905時間かけて製作したドレスはシルク生地に宝石やガラスビーズを刺繍しているという。。。すんごい職人技。ゴージャスっ。
思い出せるところで個人的に好きだったのは…
モナ・パテル(Iris Van Herpen)、グレタ・リー(LOEWE)、エル・ファニング(Balmain)、ダヴ・キャメロン&ダミアーノ・ダヴィッド(Diesel)、リル・ナズ・X(LUAR)、トロイ・シヴァン(Prada)、ジェフ・ゴールドブラム(Prada)、ハンナ・バグショー&エディ・レッドメイン(STEVE O SMITH)、、、トロイ・シヴァンの2008-09AWのプラダが好みすぎる、腰のところに蝶のブローチついてるのめちゃくちゃ良。
そんなこんなで、2024年のメットガラのセレブ達を見た後に、2015年のメットガラのドキュメンタリー映画『The First Monday in May(邦題:メットガラ ドレスをまとった美術館)』がプライムで配信されてたのを思い出し、見てみることにしました。これが想像以上に面白くてですね、こんな記事をしたためることに相成りました。笑
プライム(日本)のサムネ画像がレッドカーペットのリアーナの写真だったので、映画でもセレブ達のレッドカーペットの部分が大半かと思ったら、メットガラ…そして2015年の服飾研究所の展覧会『鏡の中の中国展』開催までのメトロポリタン美術館とヴォーグ誌の裏側の部分がほとんどで、たいへん見応えがありました。
メットガラの立役者であるアナ・ウィンターや、メトロポリタン美術館服飾研究所のキュレーターのアンドリュー・ボルトン、ラガーフェルド(この頃まだ存命だったのだね)やガリアーノ、ゴルチエなどのメゾンの大御所デザイナーや、展示会のアートディレクションを務めたウォン・カーウァイやバズ・ラーマンなどの映画監督のインタビューなどもあり、作り手の話を丹念に聞けたのが特に面白かったです。
「そもそもファッションはアートなのか?」
という提起について考えさせられる内容でもありました。
その問いかけに対する答えは、このドキュメンタリー映画の中でファッション業界の中心にいる人々の様々な声で聞くことができるわけですが、
私なりに思うところは、アートは元々ラテン語の「アルス(ars)」が語源となっていて「技術」などを意味していて、芸術、軍事、医学、建築工学を含め人の手仕事の技術を要するものをすべてアートと呼んでいた歴史を鑑みても、デザイナーや職人たちの精密な技術あってこそのファッションをアートと呼んでも良いのではないかということです。
(トートタロットの14番目のカードは「ART」…ウェイト版での節制…で日本語では<技>と訳されている錬金術のカードです。)
とはいえ、映画中のラガーフェルドのように「アートではない、ドレスメーカーだ」と言い切るのも、作り手としてのプライドを感じるし、今の人々が「アート」という言葉に感じるどこか抽象的なイメージよりも、ドレスメーカーだという言葉は更に語源の「技術」に近しく、それもまた真実だなと思うのでありました。
ファッションに興味がなくても、頭の中にあるファンタジーを精巧な技術や、様々な人の力を借り現実に生み出す、創り出す、技術を残して繋げていくというような、そういうのに惹かれる方にも見ていただきたい映画です。
あと少し話は反れるのですが、作中でウォン・カーウァイが「多くを見せすぎるのはよくない。何も見ないのと同じだ」的なことを、言ってて、展覧会の展示品をどう見せるかということを言ってるのですが、その言葉は色んなことにも通ずるなと思い、とても心に残りました。
更に余談ですが、キュレーターのボルトン氏はめちゃくちゃクレーバーで小綺麗なイケオジでとてもときめくので、イケオジ好きにも見てもらいたい。見た目とお洋服の雰囲気が乙女座っぽいなと思ってたら本当に乙女座でした。笑